朝食を済ませ、エナがじっとベリルを見つめる。

「……もう少し待て」

 紅茶を傾けて眉をひそめた。

「クッキーならいいんじゃない?」

 マルタが助け船を出した。仕方なく溜息混じりにクッキーを運んでくるベリル。

 装飾の施された大きな皿の上には、色とりどりのクッキーが乗せられている。

 そして再びキッチンに戻ったベリルは、ジャスミンティーを煎れた。

 砂糖を入れない紅茶はクッキーの甘さを引き立てる。


 そうして、時は過ぎていく。数日、ナーディンに滞在してベリルたちはまた旅を続けた。

 ユリエスはナーディンにもう少し滞在するらしい。

 本人の意思なのかどうかは定かではないが……2人の雑用を頼まれている風ではあった。

 大きく手を振るマルタと、その隣で小さく手を振るエナに軽く手を挙げて応えるベリル。

[良い村だったな]
「うむ」


END


【遙か彼方の甘いトキメキ】
Special Thanks→

「月灯の民」
マルティエーラ(マルタ)、エナ、ユリエス、ハローラ
作 家:月咲風歌

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