[それだけあればどうだ?]
「……俺のために?」

 ユリエスは手の上にあるナイフとウロコを眺めた。

 乳白色の5枚のウロコが、入る日差しを照り返す。

「でもこのナイフ……!」
「価値のある事に使われるなら充分だ」
[うむ。造った甲斐がある]

 ユリエスは、柔らかに微笑む2人を見つめた。

[ベリル、ついていってやりなさい]
「! いいのか!?」
「それで良いと言うのなら」

 それに、ユリエスは大きく頭を縦に振った。むしろついてきて! というくらいの勢いだ。

[では、ベリルの馬は私が持ってこよう]
「頼む」

 ヴァラオムはドラゴンに戻り、街に向かって飛び立った。

 そうして馬車は、ヴァラオムが追いつけるようにゆっくりと隣国の王都アルンカノに向かった。