ベリルが薄笑いでぼそりとつぶやくと、大きな羽音が聞こえてきた。

「げぇ!? あの時のドラゴンっ?」

 ユリエスが驚いて馬車の後方、外を覗くと白いドラゴンがこちらに向かって飛んで来ていた。

 着地と同時に人間に変身する。

[随分と遠い厩舎だ]
「特別製だ」

 しれっと応えるベリル。そうしてヴァラオムに一通り説明すると、彼はギロリとユリエスを睨み付けた。

[よくもそんな事を!]
「ごめん……」
「そう言うな」

 肩を落とすユリエスにベリルは苦笑いを返した。

「奴が怒っているのは別の問題だよ」

[うむ。そうする前に何故、相談しなかった]

 金色の瞳がユリエスを映す。自分のしようとする事に恐怖し、決断を早めてしまった。ユリエスは後悔した。