行く当てのない旅だ。ベリルとヴァラオムはエナたちの元に目標を定めた。

 エナとは妖精の少女で、月灯の民マルタの親友。

 マルタは滅びた種族とされる月灯の民、最後の生き残りの1人である。

 討伐に呼ばれた時、気分転換にアップルパイを作っていたベリルの菓子の匂いをエナがかぎつけて、そこから彼のアップルパイがお気に入りとなったようだ。

 手紙に描かれている大体の地図を眺める。いや、もうホントに大体で描いているのだ。

 ファンタジアの大体の形を描き、適当に○をして、やじるしで「ココ」くらいの勢い。

[これは本気なのかふざけているのか]

 ヴァラオムが呆れて腰に手を当てた。

「村の名前は以前に聞いていた」

 ベリルなら、そこから辿れるでしょ? という事なのだろう。

 確かに、彼はその村を訪れた事は無いが場所は大体知っている。

 ベリルの馬には、集落で作った小麦粉とヤギのバターが積まれていた。

 西の辺境にある流浪の民の集落からは、かなりの距離がある。

 のんびり行くとするか──ベリルはゆっくりと馬の歩みを進めた。