[そろそろ一端、集落に戻るかね?]とヴァラオム。

 あれからさらに数ヶ月が過ぎ、長老が呼び出す予感が漂ってきた。

「……そうだな」

[魔法円で帰るか?]

 広い草原、人もいないのでヴァラオムはドラゴンの姿に戻っている。

 ファンタジアの東、ここから集落までは数十日かかるだろう。

[私の背に乗ればもっと早く着くぞ]
「馬はどうする」

[どこかの街に預けておけばよい]
「この馬は稀少なんだ」

 馬自体は普通である。何が『稀少』かというと、ヴァラオムを恐れない馬だからだ。

 初めてヴァラオムと対峙した時もこの馬は、のほほんとベリルの手綱に掴まれていた。

 主人が主人なら馬も馬。しれっとしたものだ。

「魔法では家の庭に着いてしまうな……集落の入り口辺りにもう1つ描くか」

 今回は旅を続けながら集落に向かう事にした。