「……」

 ベリルは風に厳しい顔を向け、空を一瞥(いちべつ)した。

「大気が……騒いでいる」
「え?」

 聞き返したサナにベリルは向き直り、真剣な面持ちで発する。

「私は数日後に旅に出ようと思う」
「えっ!? まだ17歳になってないのに」

 拾われた当初、ベリルには名前以外の記憶はなかった。

 しかし、自分が生まれて3年だという事だけは解っていたようで長老は、彼を拾った日を生まれ日とした。

「本当に、行くの?」

 見据えられた瞳にウソはない。

 何を感じ取っているのだろうか……まるで、何かに突き動かされるように。

 何かに追いつくために、早く知識を吸収しようとするかのように……

「若きお前に託すのは重圧かもしれんが、集落を頼みたい」

「どういう事?」

 ベリルはそれ以上、語らなかった。