「あっ、すい…っません…」


ドンッと目の前を歩いていた誰かにぶつかってしまい、か細い声で謝る。



「おー。って遥加?」


!?
この声…

「とも…や?」


わたしは自分がぶつかってしまった相手に気付き、反射的に顔を上げてしまう。



「……!」


わたしの顔を見た瞬間に、知哉の表情は驚愕の表情へと変わる。

慌てて下を向くが、知哉は何も言わない。


どうしよ…
顔……見られた!?


「遥加ー!!」


遠くから孝太の声がし、肩が震える。


どう…しよ…

…逃げなきゃ!!!


頭の片隅でそう思うと、足は自然と動き出していた。


「え?おい、遥加!」


知哉が驚きつつも、わたしの名前を呼んだことに気付いたが
加速を始めた足はもう止まらなかった。




どこに行くと決めたわけでもなかったのに、足は屋上へと向かっていた。