【短編】スキまでの距離




せっかくのチャンス。
なのにやっぱり何も言えないでいた。


佐藤くんも何も話さない。
2人無言で歩く。

どう切り出そうかと思って悩んでいると、






「結城、今日あんまり話せなかったな。」


先に話しかけてきたのは佐藤君で、
にっこり笑ってあたしを見ている。


「う、うん。そだね。」


照れてしまって足元しか見られない。


でも頑張って話さなきゃ。
せっかくのチャンスだもん。



「佐藤くんなんか忙しそうだったから。
えっと・・・大変そうだったよね。」



こんなことが言いたいわけじゃないのに。

気の利いた言葉なんてひとつも出てこない。