【短編】スキまでの距離




「結城はまだ残ってんの?」

「えっ?
あっ、もう帰るよ。」


「じゃあ送って行くよ。
もうすぐ日も暮れるぞ。」



そういって佐藤くんは荷物を持って教室を出る。


嬉しさと驚きでしばらく動けなかった。







はっと気付いて慌てて佐藤くんの後を追った。

廊下にはもう佐藤くんの姿はなくて
急いで玄関まで走った。




佐藤くんは先に靴を履き替えて靴箱にもたれていた。
夕暮れに染まる背中がなんだか悲しく見えた。



あたしの姿を見るとにっこり笑って

「行くか。」



とだけ言って歩き出した。