「部屋に戻るよ」
ずっと同じ体制で座っていたからからか、急に立ち上がると一瞬クラリと眩暈がした。
同じようにカナンもゆっくりと立ち上がって、あたしを静かに見下ろした。
夕日を背にしたカナンが眩しくて、どんな顔をしているかは見えなかった。
「……辛いか?」
…驚いた。小さな声だったけど、カナンは確かにそう呟いた。
顔をすぐさま上げて見れば、ちょうど逆光で。
辛い、ってなんでそんな事聞くの?いつもはそんな感情なんかいらないって言うくせに。
「……辛くないよ。ドールだから」
自分で言っておいて、口から出た言葉にハッとする。
ドールなんていっても、あたしは何も知らないのに。自分のことがよく分からないのに。
「そうか」
だけどカナンはそう呟いただけで何も言ってこなかった。
「…あたしは、リタのドールだから」
再び零れた言葉は、まるで自分に言い聞かせる鎖みたい。


