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「………おい」
「カナン……、」
「何してる?」
中庭にしゃがみ込むあたしの頭に影を作ったのはカナンだった。
あれから、どれくらい時間が経ったんだろう。ただ遠くから様子を監視するだけだったのに、この疲労感。
花を手入れをしながらぼんやりと空を眺めて、そしてここに腰を下ろした。
「いつからここにいるんだ?」
カナンもあたしの目線に合わせるように、そこにしゃがみ込み、あたしの冷たくなった肩をさすった。
もうだいぶ時間が過ぎていたのだろう。あんなに高かった太陽が、傾いている。
「マリー…」
「リタ、結婚するの?」
何か言いたそうに、あたしの名前を呼ぶカナンの顔なんか見もしないで、単刀直入に聞いた。
あまりカナンと目を合わせたくなくて、手首に刻まれたナンバーを隠すための、金の装飾がついた革のブレスレットを、なんとなく眺めた。
「結婚じゃない、婚約だ」
「……そう」
躊躇いもせずに、そう答えるカナンに、あたしはそっけなく呟いた。


