「もういいかしら?貴重な時間を無駄にはしたくないんですの」
「な、いいかげんに…っ」
「あまり、私を怒らせない方がいいですわ」
「………っ」
一瞬、ユラハの笑顔の裏の冷たい表情が見えた。
遠くからでも分かる。
殺気。
こんなに離れていて背筋に悪寒が走ってしまった。
「私、実はそんなに気は長くないんですの。まだ何か用があるなら早急にお願いいたしますわ」
もうさっきの柔らかな笑顔なんてどこにもない。
完璧に作られた、その裏に何かを秘めた笑顔。
今だけ、ユラハの周りが灰色に霞んで見えた。
「え、あ……いえ」
「そう。では失礼いたします」
そう言うと、ユラハは踵を返し軽やかに歩き出して行ってしまった。
「………は、」
……終わった。
気が抜けたせいか、短い溜息とともに汗が噴きでた。
多分、短い時間のはずなのに、とてつもなく長く感じた。
あの子は、一体…。
茂みに隠れていたあたしは、そこに吸い込まれるように膝をついた。
何故かあたしの呼吸は乱れてた。


