「リタ様ぁ」
やだ。そんな声で呼ばないで。
まただ。あの人、リタを追いかけてぴったりくっついて離れない。
「あの、俺に構ったって面白いことなんかないですよ?」
少し苛立ちのこもった、リタの不器用な敬語。明らかに欝陶しがってる。
「あら、私はリタ様のことが知りたいですもの。十分、面白いですわ」
けっして崩れない、明るい笑顔。彼女は、その裏で何を考えてるんだろう。
『いいか、リタ様には気付かれないようにあの女を監視するんだ』
分かってるってば。頭の中にカナンの声が響く。
『あいつもドールだから……』
リタの隣で明るく微笑む彼女がドールだなんて。あたしと、同じだなんて。
あたしと同じドールがリタの隣にいる。それが例え命令だとしても。
その場所は、あたしがずっと欲しかったところなのに。
二人のずっと後ろにいるあたしは影の中。ただ、ぼんやりと見つめるだけ。
「はっきり言いますけど、俺今は誰とも結婚なんかする気はないですよ」
遠くからでも聞こえたリタの声にドキリと心臓が音をたてた。


