去っていくカナンの背中は、知らない人みたいだった。
部屋にある狭いシャワー室の壁にもたれて、思い出す。胸にある靄が濃くなって、晴れない。
頭から水を被って、体を洗い流しても、この変な感じは泥と一緒には洗い流すことはできなかった。
あたしは何も知らない。ただ、お父さんとカナンに教わったことがあたしの全て。
カナンがあたしを信用してくれてるみたいに、あたしもカナンが信用してる。
だってカナンはいつだってあたしを守ってくれたから。
でも、あたしだっていつまでも子供じゃないよ。何も分からないままでいたくない。
でも、カナンは何も教えてくれないんだね。
あたしは何も知っちゃいけないの?知ったら面倒なの?だからいつも『余計なことは考えるな』って言うの?
ドールに、あたしに感情があることはいけないってこと。
でも、あたしはいつもモヤモヤしてる。余計なこと考えてる。その時点でカナンのいう理想のドールには近付けないよ。


