リタが行っても、カナンは動こうとしなかった。
気まずい空気が流れる。いつものカナンなら、用事が済んだらさっさと行ってしまうのに。
それとも、あたしに用があるの?
「マリー」
だんだんと近づいてくるカナンに、肩がビクンと震えた。
そしてカナンはあたしの耳に唇を寄せて、囁くように言った。
「あの女から目を離すなよ」
「……え?」
なにを言われるのかと思ったら…。全く予想外な言葉に、声が出るまで少し間があいてしまった。
「お前…」
カナンはもう少し緊張感を持て、と言わんばかりに目を細めてあたしを見た。
「あいつ、どう考えてもリタ様との結婚を狙ってる。カトリナ家といえば身分はそれなりだが権力はいまいちだからな。このパーティーはいいチャンスだと踏んだんだろう」
「ちょ、ちょっと待ってよ…!」
淡々と長い説明を一気にしてくれるカナンに手を挙げて中断を求める。
「そんな気持ちでリタに近付いてる人なら、あたし分かるもん!」
昨日のパーティー、灰色の色した人なら、それなりにいた。
でもあの人は、ユラハ…さんは、そんな色じゃなかった。


