欠陥ドール



「カナン…!」


重たかった胸の中が少し軽くなった気がした。


助けを求めてカナンに手を伸ばしかけて、あたしは気付く。


昨日の出来事を。


あたしは思わず手を引っ込めてしまった。



カナンは何も言わない。ただ、その翡翠色の瞳をあたしに向けて無言の圧力をかける。


「ユラハ様も、食事の時間ですのでお戻り下さい」


「あら、もうそんな時間ですのね。リタ様、戻りましょう」


そして何も言えなくて俯くあたしを無視してカナンは微笑む。嘘の笑顔で。


カナンが何考えてるか分かんないよ。


昨日の言葉が頭から離れないよ。


「マリー?」


あたしの様子を心配してか顔を覗くリタに向かって、カナンは静かに威圧する。


「リタ様?みんな、あなたをお待ちなのですよ?」


「……分かったよ」


リタは諦めたようにため息を吐いて踵を返す。そしてユラハはその後を追ってついていく。


見たくないけど、でもどうしても気になって顔を上げてしまう。小さくなっていく二人の背中。


結局、あたしはリタと話せなかった。でも、それよりも今はカナンの方も気になって、頭がぐちゃぐちゃなの。