何もかも、見透かされてる。昔から、カナンにはいつもあたしの行動なんて読まれてる。
分かってる。集中しろって言いたいんでしょ。そりゃ、あたしだってリタに危険が及ぶのは嫌だからちゃんと仕事はするよ。
だからカナンもリタに怪しい奴とか近付かないようにしてよ。なんて、あの女の人達からはまるで危険な感じなんてしないけど。
カナンはすぐに、リタの周りに集まってくる人達に愛想を振り撒いて何か話してるようだった。
あたしの気なんか知らないで。
いや、反対だ。カナンにはばれてた。あたしの気が乱れた事。
だって、あんなにリタに近付いて、リタの体にベタベタ触ってるんだもん。
あたしだって、あんまり触ったことないのに。
だめ、これ以上は…。
腹の中から沸き上がってくる、黒いなにかを必死で抑え込む。
今からあたしは完璧なドール。
まるで暗示するように何度も胸で呟く。
今この時だけ、感情なんてどこかへいってしまえ。
じゃなきゃ、あたしは役に立ちそうもない。


