欠陥ドール



カナンは、人間が嫌いなのかな。初めて会う人を見る時のカナンの目は、とても恐い。



「俺達の今のマスターはリタ様だ。表で支えるのが俺の役目。裏で支えるのがお前の役目。分かるか?」



あたしが黙って頷くと、カナンは嘘がないか調べる為にじっと目を見つめる。



だって嫌っていうほど聞かされたのに、それくらい分かるよ。



「裏と表は表裏一体。だが、相入れない」



難しい、言葉は嫌いだって言ってるのに。



「……よく、分かんない」


「矛盾しててもいいんだ」


そう言って呟くカナンは、なんだか悲しそうって顔してる。



「だから、お前がリタ様に近付くのはダメだ。お前の中にあるリタ様に対して思っている事も、全て消せ」


簡単な、言葉だって嫌い。


「……なんで?」



「護身用のドールに感情やコミュニケーション能力はいらないから。あっても邪魔なだけ。俺はそう考える」



カナンはあたしの質問にあっさりと答えをくれる。



聞かなければ良かった。