欠陥ドール



「俺だって遊びで出るわけじゃねーよ……って、マリー!」



いきなりカナンはあたしの頭に左手を手刀のように振り落とした。



痛くはないけど、じーんとした余韻はなんとなく伝わる。



「外ではリタ様って呼べって言っただろ?誰が聞いてるか分からないんだから」

「…あ」



そういえば、そんなこと言われてたな。



でもそうやって呼ぶとリタはいつも不機嫌そうな顔するから。


そんなリタの顔見るのは嫌だったから、つい忘れてた。



「今度から気をつける」



なんて、またリタの嫌そうな顔見たらそんな事忘れちゃうんだろうけど。




「マリー、」



カナンがいきなりあたしを見据えるから、あたしのこっそり思った悪い考えが伝わったんじゃないかとドキリとする。