そこだけは、他とは異質であった。 賑やかなパフォーマンスが周りで行われているなか、そこでは、ベンチに座った女の子がアコースティックギターを片手に歌を紡いでいた。 ニットの帽子を深めに被り、寒さで手が赤くなりながらもギターを弾く手を休めない彼女。 ふと、どこかで見たことがあるように思えたが、気にしないことにした。 「次が今日、最後です。 曲名はsignです。」 透き通っているような声は、そう言うと、歌詞を紡いだ。