突然、吹いた風に冷たさを感じた。 かじかむ手に息を吐くと、白い息が空気中へと舞った。 今にも雪が降りそうな夜空は、紺色に染まり、微かに月がぼやけて見えた。 ふと、楽器を片付ける彼女の手を見た。 手袋もなにも付けない手は赤くなり、とても冷たそうであった。 こんな寒いなか、ギターを弾いたら指は痛いだろう。 「あっ…」 手の中にさっき買ったコーヒーがあるのを忘れていた。 コーヒーはすでに少しぬるくなっているが、それでも温かかった。