やがて、パラパラと観客達は去って行った。
俺はというと、なぜかそこから離れることができなかった。
歌い終え、楽器を片付ける彼女はどこか嬉しそうに見えた。
俺の頭中には、もう女と待ち合わせをしていることなんて忘れていて、ただ目の前にいる彼女を見ていた。
胸のあたりまである長く綺麗な黒髪にニット帽被っている彼女。
スッとした端整な顔立ちに印象的な瞳が魅力的である。
キレイな人だと思った。
今まで色んな女の子と知り合ったけど、ここまで素直にそう思ったのは初めてだ。
化粧なんかで飾らないその姿はどんな女よりも美しい。

