案内された席には、 いつも先客がいる。 クリスマスの時にしか現れない 先客が。 彼は毎年、クリスマスに 玲奈が来るのを待っている。 と言っても、何も話さないので 待っていると思っているのは、 玲奈だけかもしれないが。 マスターが注文を聞きに来る。 「いつものを」 「かしこまりました」 短いやり取り。 その間も、彼は黙っている。