アナタがいたから

「ほら~、あれが僕達の屋敷だよ~」
そう言って袁君が指差した方角にあったのはどう見てもお城だった。
「……え、袁君?屋敷って、あの大きいお城っぽい建物?それともその手前の小さい建物のどれか?」
「大きい方だよ~」
(……そりゃま~立派なお屋敷といえばお屋敷なのかもしれないけど…。けど……城じゃん!!)
あっけにとられたまま、少し引きつった笑いを浮かべて、私は袁君の肩から少し見える袁君の横顔に聞いた。
「ねぇ、もしかして袁君って……王子様だったりするわけ?」
「王子様じゃないよ。僕達は別に国王様の子供じゃないから」
「でも、あの家ってどう見てもお城じゃ……」
「あ、違う違う。見た目はお城みたいだけど聖都メルベスの王宮はもっと街の方にあって、もっともっと大きいよ。ここは街のはずれ。聖都の端っこなんだ」
「へ、へぇ~(あれよりデカイ城って…私の貧弱な脳ミソでは想像できないわ…)」
袁君が言う【屋敷】の周りには堀があり、その堀にかけられている跳ね橋を渡った所で袁君が私を下ろし、大きな扉の横についてある通用口のような小さな扉をあけて中へと通してくれた。
外壁に囲まれていて外からは分らなかったが、中に入ってみると荒れ城と言った感じで、建物の一部は壊れ、庭も相当手入れをしてないのかあまり綺麗な状態ではなく、何だか寂れた感じがする屋敷だった。