アナタがいたから

(かといって、私はどうすればいいのかしら……私に何かできることは無いの?)
私がそう考えていると、ホンワリとした温かい物が私の腕から広がってくる。
(……何?)
チラリと燿君を見ても、燿君の様子に変わりは無い。
腕からの温かさは、私の体をすべて包み込み、その温かさに身を任せるように私は瞳を閉じた。
(優しい……)
≪凛……≫
(誰?……私を呼んだ?)
≪凛、彼女を救ってあげて……≫
(彼女?……彼女って誰?それに、救うってどうやって……)
≪お願い……救ってあげて。彼女を……≫
「凛!凛ってば!!」
やさしい女の人の声と会話をしていると、燿君の叫ぶように私を呼ぶ声が聞こえ、私は目を開く。
目の前に心配そうな表情で私の体を抱きとめている燿君が居た。
「……あ、あれ?私?」
「良かった……急にへたり込んで、目を閉じてるし、動かないし……」
「ご、ごめん……(夢?……でも……)」
燿君に支えられるようにして立ち上がった私は周りの様子が違うことに気づく。
目をこすり、もう一度良く周りを見渡した。
空気の流れの中に、ふんわりと漂うオーラが見える。
揺れ動く様々なオーラの中に紫色によどんだ風に重く漂うオーラ。
異質なそれが漂って来る方向は1つ。
「り、凛?」
燿君の腕を離れ、私はその方向へ歩き始める。
噴水を通り過ぎ、庭の更に奥へと進んでいけば、大きな薔薇のアーチがありそれをくぐり、恐らくバラ園だっただろう枯れはてた園内に入った。