「……随分荒れてるのね」
「あぁ、ココは俺の母親が一番好きだった場所なんだ」
「豹君の?……だったって?」
「俺の母親と燿の母親は一緒だ……自然が大好きで、動物達ととても仲の良かった人だったんだ。母さんはこの屋敷の庭をいつでも手入れしていた。だから、母さんが居なくなってからは何処もかしこも荒れ放題なんだ……」
「誰か代わりにすれば良いのに……」
「……出来無いんだよ。母さんの思いが強すぎて、誰も手を入れることが出来無いんだ」
私には豹君の言っている事が良く分らなかった。
どう言う事か聞こうとしたとき、豹君が前方の噴水の向こう側を指差し言う。
「……あそこにいる」
「え?」
噴水の縁に腰掛けて、肩を揺らしている燿君の姿が見えた。
「……豹君、ありがとう。2人で話したいから」
「ん、じゃ、俺は戻ってるよ……」
「ありがとう……」
少し寂しそうな表情を浮かべた豹君だったが、走ってその場を後にし、私はその姿を見送って、燿君の近くに腰をおろす。
「……何しに来た」
嗚咽の中、私の方を向こうともしないで燿君はそう言った。
「クソガキの泣きべそを見に来たのよ」
「ムッ、お、お前に何が分るんだよ!」
「……そうね。燿君はとっても幸せ者だって言う事は分るわよ」
「お、俺が……幸せ?」
「私はね……兄弟も居なければ、両親も居ない。どんなに辛いことがあっても、苦しいことがあっても、慰めてくれたり、力になってくれる人なんて居なかった。だから、アナタの事を心配してくれる人があんなに居て、私にとってはそれは羨ましいことだし、幸せ者だなって思うの」
「凛、兄弟いないのか?親も?」
「うん、誰も居ないの……友達は居るけど、やっぱり兄弟や両親と友達は違うもの」
私がそう言うと燿君は涙でグシャグシャになった顔を私に向けて、ジッと私の瞳を見つめる。
何かを言おうとしているけれど、言葉にならないのか、言葉が出てこないのか、口から出るのは嗚咽だけだった。
「あぁ、ココは俺の母親が一番好きだった場所なんだ」
「豹君の?……だったって?」
「俺の母親と燿の母親は一緒だ……自然が大好きで、動物達ととても仲の良かった人だったんだ。母さんはこの屋敷の庭をいつでも手入れしていた。だから、母さんが居なくなってからは何処もかしこも荒れ放題なんだ……」
「誰か代わりにすれば良いのに……」
「……出来無いんだよ。母さんの思いが強すぎて、誰も手を入れることが出来無いんだ」
私には豹君の言っている事が良く分らなかった。
どう言う事か聞こうとしたとき、豹君が前方の噴水の向こう側を指差し言う。
「……あそこにいる」
「え?」
噴水の縁に腰掛けて、肩を揺らしている燿君の姿が見えた。
「……豹君、ありがとう。2人で話したいから」
「ん、じゃ、俺は戻ってるよ……」
「ありがとう……」
少し寂しそうな表情を浮かべた豹君だったが、走ってその場を後にし、私はその姿を見送って、燿君の近くに腰をおろす。
「……何しに来た」
嗚咽の中、私の方を向こうともしないで燿君はそう言った。
「クソガキの泣きべそを見に来たのよ」
「ムッ、お、お前に何が分るんだよ!」
「……そうね。燿君はとっても幸せ者だって言う事は分るわよ」
「お、俺が……幸せ?」
「私はね……兄弟も居なければ、両親も居ない。どんなに辛いことがあっても、苦しいことがあっても、慰めてくれたり、力になってくれる人なんて居なかった。だから、アナタの事を心配してくれる人があんなに居て、私にとってはそれは羨ましいことだし、幸せ者だなって思うの」
「凛、兄弟いないのか?親も?」
「うん、誰も居ないの……友達は居るけど、やっぱり兄弟や両親と友達は違うもの」
私がそう言うと燿君は涙でグシャグシャになった顔を私に向けて、ジッと私の瞳を見つめる。
何かを言おうとしているけれど、言葉にならないのか、言葉が出てこないのか、口から出るのは嗚咽だけだった。
