アナタがいたから

何だか体が上下にゆすられる感覚と、頬に当たるあたたかさに徐々に意識がハッキリしてきた私は、瞳を開けて驚いた。
「え?!な……何?」
「お、気が付いたか?」
「うん、気が付いた……って誰?!それに何処?!」
誰か分からない広い男の背中に背負われている事に気が付いてバタバタと暴れると、男は慌てて私を地面に下ろし、溜息をついてもう1人、先を歩いていた男に話しかける。
「燿(よう)~お嬢ちゃんが気が付いたよ~」
「……袁(えん)、良く見ろ……それの何処がお嬢ちゃんだ」
(ムッ!行き成り失礼な…イ、イケメンね)
岩のように大きな体で小麦色に焼けた肌に、白く短髪で茶色いつぶらな瞳の男は袁(えん)と言うらしい。
そして、スラリとした細い体に適度な筋肉が付いて、背も私の倍はあるんじゃないかっていうほどに高い赤い瞳の嫌味な男は燿(よう)と言うらしい。
長い赤紫色の髪の毛を後ろでひとつにまとめた燿は私の方に歩いてきてボスボスと力任せに私の頭を上から押し付けるように叩いて袁に言う。
「チビで可愛いお嬢ちゃんに見えるだろうが……」
更に燿は私の髪の毛を掴みグイッと顔をあげさせて
「この顔、どう見たって十代じゃねぇだろ?」
「痛たたた!何すんのよ!」
「あ、ダメだよ~燿」
私が叫ぶと私の髪の毛を持っている燿の手を袁が振り払ってその大きな腕で抱き上げ、背中に乗せた。