アナタがいたから

「コントロールは中々だが、もっと硬いものじゃないとな」
「硬いものって、それじゃ当たったら痛いでしょ。って、また何か新しいのが出た」
「人を魔物みたいに言うな。チンチクリン」
「チ!チンチクリン?!」
「今、燿がそう呼んだだろう?お前の名前はチンチクリン」
「ば!馬鹿じゃないの?!どこの世界に可愛い我が子に『チンチクリン』なんて名前付けるのよ!」
「何だ、違うのか?」
「あ~~翳(えい)兄ちゃん、それ違うから」
腰まである長い黒髪をサラサラと流して階段を降りてくる少々暗めの男の人はどうやら翳(えい)と言うらしい。
「あのね~とぼけないでよね!ワザと言ったでしょ!」
「ワザと?何をだ?」
「え?も、もしかして、真面目にチンチクリンだと思ったとか?」
「あぁ、だが違うのだろう?本当の名は何と言うのだ?」
「榊木凛(マジで?イヤイヤ、それってマジだったらすんごい天然な美形ってことに)」
自分の名前をボソリと呟いて、見事な天然っぷりに驚きながらもその美形に見ほれた。