「香織…僕とつきあってくれる?」

僕の言葉を待っていたかのように、彼女は僕が今までで見た一番の笑顔を僕にくれた。

その笑顔に桜の木が秋だという事を忘れ、全ての花が一斉に芽吹いて満開になったかのような錯覚を覚える。


この笑顔は僕だけのために向けられている。

君の心は今、僕だけを真っ直ぐに見つめているんだね。

「あたし…廉君が好き。春にここであなたを見かけてからずっとずっと好きだったの。」

ふわりと手を伸ばし僕に触れてくる香織。

触れた先から二人の胸の鼓動が伝わり頬が熱くなるけれど、互いの鼓動が同じリズムを同じ速度で打っているのを感じて心が満たされていくのを感じる。

緊張で僅かに震える指が君の身体をふわりと抱きとめる。

まるで生まれたての子猫を抱いているように柔らかで不安定で、こんな危うい君を心から護ってあげたいと思う。


心の奥から強い思いが込み上げてきて


震えていた指が静かに治まっていく。



君を抱きしめる



ただそれだけで僕を強く変えていく何かが



君にはあるんだろうか