冬のロマンス

 「・・・なんだよ?」
向かい合わせでサラダをつついていた沙成は、哲平の視線に気がつき顔を上げた。怒っているように唇を尖らせてはいるが、実のところ照れているだけである。「待ってた」とも「会いたかった」とも口には出していないが、料理を用意していたあたりで哲平に気持ちはばれているだろう。
 「暇はないとか散々なこと言ってたくせに、待ってたんだ?」
案の定嬉しそうな揶揄の言葉が掛かる。
 「・・・暇はないとは言ったけど、一緒に居られないとは言ってない。ハヤトチリしたのは哲平だろ」
実を言えば言い過ぎたと少々後悔もしていたのだが、今ここで告げるのはなんだか悔しい。
 今だって言葉の揚げ足を取って、悪戯げに瞳を輝かせているのだから。
「一緒に居たいと、少しは思っててくれたんだ?」
「・・・仕事を手伝わせようと思ってただけだよっ」