冬のロマンス


 家の中も沙成自身もすっかり暖まった後、二人は遅い夕食を取った。
 あの日一方的に怒って飛び出したものの、やはり会いたい思いは消せなくて。哲平は最初からウエストの閉店まで時間潰しするつもりで部室に残っていたので、パーティには出ず食事もしなかったらしい。
 「ありあわせでいーよ、沙成の作ったもんなら」
殊勝に言った哲平の前に出されたのは、どう見ても〈御馳走〉の域に入る品ばかりだった。しかも献立は哲平の好物ばかりで構成されている。料理を作っていてくれたことも嬉しいのだが、沙成が自分の好物を覚えていてくれたことが何よりも嬉しかった。普段の言葉はすげないくせに、沙成はこんなところでいつも哲平を大切にしていてくれる。
 冷たい言葉で哲平を拒むのは沙成なのに、さりげない優しさで暖かな気分にしてくれるのも彼なのだ。
 ダイニングに用意された御馳走を、哲平は舌だけでなく心でも味わっていた。