「いいよ、そんなこと」
「駄目。・・・まだものすごく冷えてるじゃないか」
氷のように冷たい、紅潮したままの頬を大きな掌で包む。・・・初めて会ったときも、緊張からか寒さからか沙成はこんな風に頬を染めていた。あの時、シャッターを切りはしたけど、本音を言えばこうやって触れたかったのだ。
 込み上げてくる愛しさを抑えられず、触れるか触れないかのラインで哲平は唇を近付けた。
「沙成、会いたかった・・・」
 いつものように哲平のキスから逃げようとする沙成を、今夜ばかりは許してやれない。
 「哲…」
「だめだよ、今日は。…逃がさない」
「てっぺい、やだ」
泣きそうな顔で、必死に沙成は首を振る。