玄関前で、コートごと沙成を抱きしめた哲平は、頬に触れる髪のあまりの冷たさに驚いた。
「沙成ちゃん、どれだけあそこに立ってたわけ?!」
「んー。・・・覚えてない」
すっぽりと哲平の腕の中に収まり、肩口に顔を埋めたまま沙成はくぐもった声で応じた。
「覚え・・・って、体冷え切ってるんじゃないの?!」
「・・・へいき」
確かに最初は寒かったけれども、今はこうして哲平が抱きしめていてくれるから大丈夫。
 「駄目だよ、風邪引く!!」
 抗議する間もなく、沙成は哲平によって家の中へ連行された。
 何度か泊まって、家の中の事も多少は勝手が分かる。哲平は沙成をリビングへ連れていき、ヒーターを付けると風呂の用意までした。