「どこが。凄く良い出来だよ」
それは嘘偽りない、感想。・・・早くこの絵を哲平に見せたかった。自分の好きな風景を彼に知って欲しかった。
 そしてなにより。・・・会いたかった。
 「沙成画商のお眼鏡にかなったってことは、自信持っていいってことかな?」
くすくすと幸が笑うと、沙成もつられて笑ってしまう。
「何を何を。杉本画伯に、私ごとき弱輩が申す言葉などありませんよ」
「あ、そういう風に出る?」
しばらく画商対画伯のやりとりがあったが、何か飲物を出そうと言う沙成に、幸は丁重に辞退の言葉を述べた。
「沙成、体調悪そうだからね。俺はこれで帰るよ。…余計なお世話かもしれなけど、あんまり体調悪かったら、店閉めたほうがいいよ。どうしても閉められないって言うなら、連絡くれれば雪ちゃんと一緒に手伝いに来るし」
「ありがとう。…大丈夫。もう閉めるよ。今年分は十分に儲けさせて貰ったしね」
「そう? なら良いけど」
小首を傾げる友人を扉まで見送って、沙成はそのまま店のシャッターを閉めた。