沙成は独りぼっちだ。
 両親は絵を買い付けに行った先の国で不慮の交通事故に遭い、そのまま帰らぬ人となった。沙成が大学を卒業し、ようやく家族揃って一緒に仕事が出来るようになると喜んだ矢先の事だった。
 あの時の痛みと喪失感を、沙成は一生忘れる事が出来ないだろう。
 もう二度と大切な人を喪いたくないと、置いていかれたくないと思うのに。
 ー哲平も、沙成を独りにした。
 いつもなら、それこそ沙成の言うように、些細ないさかいをしても哲平は翌日にはウエストに現れていた。
 「ケンカしてるときは『二度と会わない』とか思うんだけどさ。-一晩経つとどうしても会いたくなるんだよ。・・・惚れた弱みってやつかな」
照れ笑いする少年の顔が、沙成は好きだった。
 思い出した笑顔は、今の沙成にはあまりにも切なくて。
 ー夜も抜いて寝ようかな。せっかく作りはしたけれど。