夕べ降った雪のせいで客足は遠のくかと思っていたのだが、却って「ホワイト・クリスマス」だからと、出歩く人が多いらしい。ウエストも予想以上の繁盛ぶりを見せた。沙成が買い付けてきた低価格帯の絵はどれも好評で、クリスマス用に仕入れたものは全て売りきれしまった。
 しかし、目の回るような忙しさも、ふと波が切れることがある。そんな時考えるのは、二日たっても現れない、沙成の言うとこの〈嘘つきで馬鹿〉の今泉哲平のことばかりである。
 先日哲平が座っていたパイプ椅子に、沙成は腰掛ける。
 昼食は食べていないが、五時を回ってしまった今ではもう食べる気にもならない。
 昔から一人で食事をするのが大嫌いだった。
 普段そんなに気にならない〈独り〉が、食事の時には何倍にも膨れ上がって沙成を押し潰す。だから、時々夕食をすっぽかしたり、見たくもないTVをつけたりすることが何となく習慣になっていった。
 昼は良い。学校なら友達がいるし、今なら秀宏がいる。
 〈独り〉じゃない。