商店街の並びに、その画廊はあった。

 ガラス張の扉の間口はさして広くないが、一歩中へ入ると外見からは想像もつかない広い空間に、多くの絵画が掛けられているのが分かる。経営者の才能か、雑多に並べられているように見えて、存外圧迫感を感じない。
 それも、ここ〈ウエスト〉の魅力なのだろうか。
 ウエストの客層は女性に広い。葉書大の大きさから気軽に買える品を揃え、主婦がインテリアに出来る物も数多く置いているせいだろう。また親切な買い取りもしているから、季節や内装に合わせて買い換える主婦も最近は増えてきたそうである。
 カラン。ドアに付けられているカウベルが来客の到来を告げた。
 「いらっしゃいませ」
先代が交通事故で亡くなった為に、去年から店主となった青年はにこやかに客を迎えた。まだ二十代も前半だが、子供の頃から両親について仕事を見てきただけあり、目端が利くと評判の画商である。
 「寒ーいっ!」
開口一番喚きたてたのは、どう見ても画廊には不似合いな学生服姿の少年だった。
 西枝沙成(にしえださなり)は相手を見るなり、げっと呟いた。