朝食を手早く済ませると 瑠璃はいつものように中庭へと向かった。 少し肌寒い季節のせいか 池の鯉は姿を見せず、底近くを泳いでいる。 そこに餌を投げ入れてやると、 深く泳いでいた鯉は表面に上がって来て 餌に勢いよく喰らいつく。 カサリ、と木の揺れる音が聞こえた。 「・・世哉か」 「はい。」 いつもの抑揚のない声が静かに答えた。