「失礼致します。」
開いたふすまの前には世哉が立っていた。
「・・世哉殿」
世哉は琥珀の声を無視して瑠璃を見た。
「佐野に特注書を取りに行くよう申したのですが
あまりに時間がかかっているので、
様子を見に来たのですが。」
昨夜の出来事を忘れているかのように、淡々と世哉は話した。
私の髪櫛を壊しておきながら、
よくも堂々と私の前に姿を現せるものだ。
「まだ目を通し終えていない。
終われば幸に届けさせる、
そなたらはもう下がれ。」
世哉の目も見ずに瑠璃は言った。
瑠璃に一礼すると世哉は部屋を出て行った。
「瑠璃様・・冗談なんかではありません。
本気で言っています、だから・・」
寂しそうな表情で部屋を出た
琥珀のすがたを瑠璃は見ていなかった。