そこには知らない男の子と一緒に居る小さい頃のウチが居た。


楽しそうに遊んでる。


この子、誰……?


ウチには記憶がなかった。

でも、その子の顔は今、そこに居る彼の顔と同じ。


その子は笑ってウチの手を引いている。


なんだろ……


何か大切な事を忘れてる気がする……。


もっと考えようとしたが、耳鳴りが激しくなった。


キィン…


瞳「あっ……」


倒れそうになった所を祐騎さんに支えて貰った。


祐「佐野、大丈夫か!?」


もう映像は途切れてる。


瞳「だ…大丈…夫です」


ウチはもう1度、彼を見た。


やはり、さっきの子と似てる。


目の色や雰囲気は違うけど……。


彼は優しく…悲しい微笑みを微かにすると一瞬のうちに遥か上のさっき降りてきたと思われる所に行った。

流「待て!」


そう言ったが彼は闇の中に消えて行った。


遊「なんだ、あいつ……」

夕「ねぇ、瞳。あの子、知り合い?」


瞳「分から…ない…。でも…あっちはウチの事、知ってるみたい……」


曖昧になった記憶を言うわけにもいかず、ウチはそう答えた。


祐「なんにせよ…。あの目の色だから味方ではないだろうな……」


流「ここにずっと居るみたいだしね」


祐「まぁ、いい。とりあえず分からない事を考えている程、余裕はないぞ。さっさと伊坂を救出しよう」


遊「そうだな。…すべてが手遅れになる前に」


流「そうしよう」


ウチはなんとか立ち上がり、また歩き始めたが涼を心配する気持ちとさっきの事が気になる気持ちで心はぐちゃぐちゃだった。