翼「……」



翼さんは黙ったまま俺の話を聞いていた。



涼「普段はもうそれは口は悪いしすぐに蹴っ飛ばしてきたりって本当困る奴で……でも…やっぱ……居なくなると………悲しいです。凄く……。だけど、だからって言って忘れちゃいけないと思うんですよ。死んだら忘れるんじゃなくて……その人の事を憶えててたまにでいいから思い出してやるべきだって思うんですよね。俺は。だから……翼さんも憶えてやって下さい。富恵の事…」



俺は悲しく笑った。



翼「……分かった。憶えてよう。この酷い戦いで巻き込まれて…勇敢に戦った少年の事を」



涼「はい。そうして貰えると嬉しいです」



翼「良かったらその女の子の名前も…教えてくれるかい?」




涼「えっ?」



俺が聞き返すと翼さんは「顔は分からなくとも、名前だけでも憶えて少しでも弔いになるように」と笑った。



涼「彼女は熊坂さん…。熊坂 沙紀です」



翼「そうか…沙紀ちゃんだね。分かったよ」




涼「翼さん…ありがとうございます」



俺は素直に翼さんに感謝した。