そのとき、美和と目が合った。


こうやって見つめ合うことはもうないと思っていたのに。


早く目を逸らなきゃいけない。


何事もなかったかのように立ち去らないと。

印象深くしてはいけない…のに。


俺は目を離せない。



5年ぶりに正面から見る君はやっぱり綺麗だった。




(…っ。)

何十分にも思える数秒間。
美和を見つめていた俺は我に返った。

『何デカイ声出してんだよっ。早く行くぞ!』

さっきより強く強引に粋の腕を引っ張り歩き出した。

『うわぁ。目合っちゃったよ…聞こえたかな?キモがられたら最悪だよ~。』

勝手に落ち込んでる粋を引きずりながら俺は別のことを考えていた。


(……大丈夫だったろうか。もし…思い出してしまったら…。)


俺はどんどん不安になってきた。

(もう…なんてことしてくれてんだよ。粋のヤツ。)

『はぁ。』

大きなため息をつきながら製図室へ急いだ。