彼の視線はどこに向けられているのだろう。
客席? いや、違う。
彼は何を見ているのだろう。
彼の視線の先には天井しかなかった。

じゃあ彼が見ていたのは天井?
それとも・・・

そして彼の話が終わり、彼はピアノの前に座った。

ほどなく曲が流れ始めた。

祐司「鮮やかな夢を観て・・・」

祐司「少しうつむくこともあった・・・」

さっきまでの曲とは違う。
さっきまでの激しい歌声ではない。

それに・・・

あゆむ「・・・」

この曲、あの日・・・

美緒『鮮やかな夢を観て・・・』

病院で美緒に会った日に、美緒が歌っていた曲だ。

あゆむ「・・・」

僕は下を向いて、少しだけ苦笑した。

メグ「あゆむ?」

あゆむ「ごめん・・・少しだけ外出てくる」

僕はそう言って席を外した。

メグ「ちょ、ちょっと!?」

・・・

・・・