朝陽のもっと向こう側

同時刻。
東都病院屋上。

夏希「・・・」

夏希「ふぅ・・・」

今日もいい天気だった。
雲もなく、風も強くなく。

そんなことを考えていると、扉が開く音がした。

圭悟「おっ、今日はもうあがりか?」

夏希「えぇ。 圭悟先生こそ、夜勤だったくせに帰らないんですか?」

圭悟「相変わらず手厳しいね・・・」

夏希「それに珍しいですね。 先生がわざわざ屋上にくるなんて」

圭悟「・・・」

圭悟先生は微かに微笑み、白衣のポケットを漁って煙草とライターを取り出した。

夏希「・・・煙草、身体に悪いですよ?」

圭悟「知っているよ」

夏希「真智ちゃんも苦労しますね」

圭悟「それより、いつまで俺に敬語を使うつもりだ?」

彼は取り出した煙草に火をつけて言った。

夏希「意識して使っているわけではないですけど・・・もう直せないと思いますよ」

圭悟「一応、同じ歳で、この病院では君のほうが先輩になるのにな・・・」

夏希「・・・」

圭悟「・・・」

少しだけ沈黙が続いた。