朝陽のもっと向こう側

東都病院8階。
美緒の病室。

美緒「・・・」

ドアが開く音。
見慣れた白衣姿の男性が入ってきた。

圭悟「まだ起きていたのか?」

美緒「今日は、小泉先生じゃないんですね」

圭悟「俺だと不服か?」

美緒「いいえ。 満足です」

そう言って静かに微笑む。

圭悟「・・・? やけに上機嫌だな。 何かあったのか?」

美緒「今日は・・・あの人が来てくれました」

圭悟「あの人? ・・・そうか」

彼は静かにそう言った。

美緒「用事があるみたいで、少しだけでしたけど」

圭悟「歌・・・聴かせたのか?」

美緒「いいえ。 さすがにあの人に聴かせるのは・・・ちょっと」

圭悟「・・・」

美緒「でも、短い歌だったけど、私のために歌ってくれました・・・」

圭悟「よかったか?」

美緒「はい! 本当に上手で・・・」

圭悟「また今度来るように言っておく。 だから、今日はもう休むことだ」

彼はそう言って時計を指差した。
消灯時間は既に過ぎている。

美緒「は~い・・・」

私がベッドに横になると、彼は電気を消して部屋から出て行った。

美緒「・・・」

美緒「・・・今日は・・・来なかったな・・・」

美緒「・・・」

・・・

・・・