朝陽のもっと向こう側

テレビとソファーとテーブルがある小さな談話室。
聞いたところによると、各階にこのような部屋が2部屋くらいあるそうだ。

あゆむ「仕事、いいんですか?」

夏希「仕事? あぁ、もう準夜勤のメンツが来る頃だから。 今はちょっと余裕あるのよ」

あゆむ「はぁ」

よくわからないが、大丈夫そうだ。

あゆむ「それで、何か話でも?」

夏希「う~ん、特にないんだけど、何か話したいことある?」

何だ、それ。 ここに連れて来たのそっちなのに。

夏希「あ、今、なんだこいつって思ったでしょ?」

あゆむ「そ、そんな滅相もない・・・」

夏希「ところで君って、もしかして結城高校の学生?」

あゆむ「はい、そうですけど」

夏希「あぁ、やっぱりそうなんだ」

あゆむ「・・・あの~?」

夏希「あ、ごめん。 私も結城の生徒だったからさ」

あゆむ「え、そうなんですか?」

夏希「うん、もう6年も前の話だけどね」

あゆむ「え、じゃあ・・・」

夏希「うん、今24歳」

あゆむ「ぜ、全然そうは見えないです・・・」

夏希「いい意味だよね?」

あゆむ「も、もちろんですよ」

夏希「それで、学校はどう? 楽しい?」

あゆむ「まぁ、それなりには楽しいですよ。 色んな人がいるわけだし」

夏希「・・・ほんとに?」

あゆむ「え、何かおかしなこと言いました?」

僕は至って平静だったと思うんだけど。
それでも夏希さんの顔が一瞬だけくもった気がする。

夏希「今の君の瞳、何だか悲しそうだったからさ」

あゆむ「え、悲しそう?」

夏希「うん。 なんとなくだけどね? 聞かないほうがよかった?」

あゆむ「い、いえ・・・そんなことはない・・・と思います」

夏希「そう?」

あゆむ「楽しいのは本当です。 ただ、やっぱり結城の学生だっていうことで、皆からの期待もかかるわけだし、それは困っていますけど」