Rain

タクシーに乗ってから気付いたけど、雨はいつの間にかやんでいた。




『あっ…』

『どーしたん?』

『傘…居酒屋に忘れてきた』

『ハハッ、陸の言ったとおりすぐなくすことになってもうたなぁ』

『ホンマや(笑)』






あたし達は二人で笑った。
タクシーの運転手もつられて笑ってた。





『あっそこ右で。で、二つ目の信号を左で』


家に近づくにつれ、あたしが詳しく道を説明していた時、急に聖夜くんが声をあげた。


『あっ、ここ知ってる…おっちゃん止めて!!』




・・・


えっ?
なんせもうマンションの近くだったのに一緒にタクシーをおりさせられた。







『びっくりするわ…』

『ごめん!!条件反射。なぁあと一杯だけ付き合ってくれへん?あそこ行きたいねんけど』





聖夜くんがそう言って指さした先には一軒のバーらしきものがあった。


あたしはよく通る近所の道なのに、その時までその店の存在は全く知らなかった。