「校則は大丈夫ですよ?」
「心配してない」
「あと、これは報告なんですけど」

 風音もスカートを押さえながら座り込む。添の手元のイチゴクリームサンドを略奪して口に放り込んだ風音が、頬にクリームを付けて言った。

「ふぉんど、ふぉんふーふひへほーほおほふんへふ」
「返せよイチゴクリーム!」
「んぐっ……。今度、コンクールに出ようと思うんです。って言いました」

 これまた意外な展開。謙虚な歌姫が他人の食べ物を略奪する上に、自分から人前で演奏しようかなと言い出すとは。
 期待していたデザートを喪失した添は、その喪失感を込めて聞き返した。

「自信、無いんじゃなかったの?」
「はい……。でも、私はやりますから」

 頬のクリームを指ですくって、風音はクリームを舐め取って言った。