タレントアビリティ

「君の貢献度は目を見張るものだったね。気まぐれに書くもの描くもの何もかもが素晴らしい作品となって、この赤羽を引っ張ってくれたよ。血みどろなものしか書けない僕とは違って、ね」
「……………………」
「けれど、君は何故か書けなくなったんだよ。理由なんて知らないが、友人として理由をこの間聞いたのだが、君は何も言わなかった……。言えなかったとは言わせないよ、スケッチブックだってあったし」
「……………………」
「だからお役御免。また書けるようになるまでの代役を、君の名前を使って募集した。最新号のウインドノベルに募集要項は書いたし、君にはせいぜい審査員でもやってもらおうか。君の後釜って事になるわけだから、君が見ないわけにはいかないだろう。〆切りは1週間後で原稿用紙30枚の一発勝負。そうだな、大賞がデビューすることになるよ。そうなったら君は、本当にお蔵入りだ」
「……………………」
「君との付き合いは長かったし、あっちゃんには感謝しているけれど、ここまでにさせていただこうか。書けなくなった作家なんて出版社から見れば足枷お荷物でしかなくて、僕は赤羽出版の社長として、君を切り捨てるよ」
「……………………」
「また書けるようになるまで、せいぜい頭を冷やしてくれればいい。言いたいことはそれだけだ」
「……………………」
「君の作品は好きだったんだけどね。書けないなら、仕方ない」

 ゆっくりと立ち上がってその場を立ち去ろうとする要に、明洲は何も求めなかった。空っぽな瞳のままで要を見ていて、落ちているスケッチブックを拾おうとすらしない。
 添の隣をそのまま抜けていく時、要が泣いているのに気付いた。無言で涙を流しながら歩いていって、途中でサングラスをかけて出て行った。添も立ち尽くしていた。