「……明洲、さん」
「ああ君はいいよ添君。ここは僕がやるっきゃないみたいだし、うん、醜い荒療治になるかもしれないからね。適当に座って眺めるならそうすればいいし、逃げるなら逃げればいい。切符なら赤羽の社員に頼みなさい」
要の纏う雰囲気が変わった事に気付かないわけがなかった。ゆっくりとくすぶっていた炎に油が注がれ、床に座り込む明洲を燃やそうとする。ゆっくりと要が明洲の隣に座っただけなのに、部屋に舞い散るスケッチブックの残骸が燃え尽きてしまったようにすら覚えた。
それはまるでいつの日か能恵が見せた怒りの表情のようで。その恐怖と重なったのを感じて、添は無意識に距離を置いた。
「で、明洲」
「……………………」
「僕と君は古い付き合いだから、僕の性格や行動力と自重のしなささを君はよく知っているだろう。だからもう先に言ってしまおうと思う。赤羽のためであり、君のためであり、そして、読者のためだ」
「……………………」
「だからもう知る通り、世界明洲の名前を捨ててもらうよ。赤羽の看板作家の肩書も、『複数の個性的作家』とかいう大層な二つ名も、何もかも捨ててもらう」
「ちょ、かな……」
「君は黙れ」
添が声を挟んだ瞬間、ナイフのような目線が添に刺さった。怖い、怖すぎる。本当に怖い。
しかし明洲は動じていない。空っぽな瞳でナイフを受け止め、ただ座るだけ。
「ああ君はいいよ添君。ここは僕がやるっきゃないみたいだし、うん、醜い荒療治になるかもしれないからね。適当に座って眺めるならそうすればいいし、逃げるなら逃げればいい。切符なら赤羽の社員に頼みなさい」
要の纏う雰囲気が変わった事に気付かないわけがなかった。ゆっくりとくすぶっていた炎に油が注がれ、床に座り込む明洲を燃やそうとする。ゆっくりと要が明洲の隣に座っただけなのに、部屋に舞い散るスケッチブックの残骸が燃え尽きてしまったようにすら覚えた。
それはまるでいつの日か能恵が見せた怒りの表情のようで。その恐怖と重なったのを感じて、添は無意識に距離を置いた。
「で、明洲」
「……………………」
「僕と君は古い付き合いだから、僕の性格や行動力と自重のしなささを君はよく知っているだろう。だからもう先に言ってしまおうと思う。赤羽のためであり、君のためであり、そして、読者のためだ」
「……………………」
「だからもう知る通り、世界明洲の名前を捨ててもらうよ。赤羽の看板作家の肩書も、『複数の個性的作家』とかいう大層な二つ名も、何もかも捨ててもらう」
「ちょ、かな……」
「君は黙れ」
添が声を挟んだ瞬間、ナイフのような目線が添に刺さった。怖い、怖すぎる。本当に怖い。
しかし明洲は動じていない。空っぽな瞳でナイフを受け止め、ただ座るだけ。
